令和6年度税制改正に関する要望

◆ 最重要要望項目

消費税関係

1 消費税の非課税取引の範囲を見直すこと。
 消費税は、消費に広く公平に負担を求める観点から、財貨・サービスによる付加価値に対して均一に課税することが原則であり、非課税取引の範囲は最小限にすべきである。
非課税取引については、商品調達や設備投資等の仕入税額控除は認められない。このため、非課税取引となる資産の譲渡等をする者は、最終消費者ではないにもかかわらず、仕入れに係る消費税について実質的に負担する仕組みとなっている。非課税取引のうち社会政策的な配慮に基づくものや日本郵便株式会社等が行う郵便切手類の譲渡については、課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきである。
2 消費税における軽減税率制度を廃止し単一税率に戻すこと。
 消費税の軽減税率制度は、①低所得者への逆進性対策としては非効率であること、②「社会保障と税の一体改革」という当初の目的から乖離して歳入を毀損していること、③区分経理等により事業者の事務負担が増加していること等の理由から、早期の見直しを図り単一税率制度に戻すべきである。
 消費税の逆進性の緩和対策としては、必ずしも税制の枠内で解消する必要はなく、マイナンバーを利用した簡素な給付措置を導入するなど給付面を含めた税制・社会保障制度全体の中で解決することが適切である

所得税関係

3 基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めること。
(1)基礎的な人的控除の見直し
 基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除は、憲法第25条が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障するための基礎的な人的控除と解され、課税最低限を示すものである。課税最低限は、財政事情を考慮しつつも、生活保護水準等を参考に決定していくことが望ましく、現行の基礎的な人的控除はその額を引き上げるべきである。
 なお、現行制度においては、16 歳未満の年少者について扶養控除が適用されない。課税最低限を構成するものであるにもかかわらず、年齢によって扶養控除に制限を設けることは適当ではなく、扶養控除の対象者に年少者も含めるべきである。
(2)所得計算上の控除から基礎控除へのシフト
 給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除額を縮減した上で、基礎的な人的控除の額を引き上げるべきである。その際には、負担調整の比重を個々の人的事情に左右されない基礎控除に移すことが望ましい。

中小法人税制

4 中小法人の配当促進税制を整備すること。
 近年、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、幅広く資本市場に参加することを通じて成長の果実を享受できる環境を整備することが重要であるとされている。このため令和5年度税制改正では上場株式等についてNISA制度の拡充などの改正が行われたが、中小法人に対する投資については、それを促進する措置は整備されていない。したがって、中小法人についても配当を行いやすい環境を整えるべきである。
 具体的には、中小法人が配当を行う場合には、中小法人の所得のうち配当に充てられた部分に対する法人税率を低くするとともに、中小法人の個人株主が配当を受ける場合にも申告分離課税制度を認めることや配当控除を引き上げることを検討すべきである。なお、この場合には、取引相場のない株式等の評価に際して株式評価額が上昇しないような制度とすることが必要である。
5 役員給与は原則として全額損金の額に算入すること。
 会社法制定により役員報酬の利益処分手続が廃止され、企業会計基準の改正により役員賞与が職務執行の対価と位置付けられるなど、役員給与の性質は抜本的に見直されてきた。法人税法第 34 条(役員給与の損金不算入)の規定は、損金に算入される役員給与を限定列挙する形式になっている。
 役員給与は職務執行の対価であり、法人税法第 22 条により原則として損金の額に算入され、恣意性のあるものなど課税上弊害があるものについてのみ損金の額に算入されないのが本来の姿であると考えられる。

 

◆ 個別要望項目

消費税関係

1 適格請求書等保存方式について、中小事業者の実務を踏まえた柔軟な運用を行うこと。
 適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、事業者の事務負担や市場取引に与える影響に配慮しつつ、経過措置などについて、その実効性や事務負担に与える影響、インボイス方式への事業者の対応状況を見極めたうえで、経過措置の延長や恒久化、または、追加的措置の導入などを検討するとともに中小事業者の実務の状況を踏まえた柔軟な運用を行うべきである。
2 基準期間制度を廃止し、新たに小規模事業者に対して選択によって申告をしなくても納税義務が免除される制度を創設すること。
 前々年又は前々事業年度を基準期間として当該課税期間の納税義務を判定する現行の制度では、その課税期間の課税売上高が多額であっても免税事業者となり、反対にその課税期間の課税売上高が少額であっても納税義務を負うような不合理な現象が生じる。
基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、全ての事業者を課税事業者としたうえで当年又は、当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合は、納税者の選択によって申告をしなくても納税義務が免除される制度を創設し、その選択については、申告期限までに申告書を提出しなければ納税義務の免除を選択すると同時に還付申告をも放棄したとみなす等の措置を講ずるべきである。
 なお、簡易課税制度についても同様に、現行の基準期間による判定ではなく、当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合には確定申告時に選択できるよう改正すべきである。

地方税関係

3 償却資産に係る固定資産税制度について、制度のあり方を抜本的に見直すこと。
 現行の償却資産税制度には、①国税における減価償却制度と償却資産の評価方法に相違があること、②賦課期日と法人の決算日に不一致があること、③課税対象資産の範囲のうち、特に家屋と償却資産の区分に関する法令等が明確でなく実務上の混乱が生じていること等の問題がある。したがって制度の抜本的な見直しが必要である。

会員の皆様へ

【税制改正に関する要望】について

 税理士会は税理士法第1条に定める「税理士の使命」に基づき、独立した公正な立場において毎年の税制改正に対して建議を行い、この建議のもとに、税理士政治連盟は国会議員に対して陳情を行っています。
 この要望書は、税務に関する専門家としての立場から、国民的な視点に立って税理士の総意として取りまとめたものの中から、千葉県税理士会と千葉県税理士政治連盟が、「令和6年度税制改正に関する要望」(令和5年8月)としたものです。

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