令和5年度税制改正に関する要望

最重要要望項目

消費税関係

1 適格請求書等保存方式の導入時期を延期するか、少なくとも中小企業者の実務を踏まえた柔軟な運用を行うこと。
 適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、下記の問題点に対して必要な措置を検討すべきである。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の制約が概ね解消され、簡易で安価な電子インボイス制度の整備のほか中小企業者の実務を踏まえた負担軽減措置が講じられるまでの間は、導入を延期するか、少なくとも中小企業者の実務を踏まえた柔軟な運用を行うべきである。
(1)事務負担に与える影響
 適格請求書等保存方式においては、取引の都度、適格請求書等の有無の確認を行う必要があり、この確認は少額取引(3万円未満)についても一定の取引以外の取引については必要となる。特に、商慣行として取引の相手方が振込料を差し引いて振り込んできたときには、新たに返還インボイスの交付・確認等の事務負担が生じる。これらは、事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせることから、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないように見直すべきである。さらに、基準期間における課税売上高が免税点以下となっても、適格請求書発行事業者の登録を取りやめなければ免税事業者にならない点など、登録制度についても、事務負担軽減の観点から再検討すべきである。
(2)市場取引に与える影響
 免税事業者は適格請求書等を発行できないため、対事業者取引から排除されることや消費税等相当額の値下げを強いられ、廃業を余儀なくされる事業者が増える可能性があることにも留意すべきである。
 一方で、対消費者取引を行う免税事業者はあえて課税事業者を選択する必要性は少なく、免税事業者を維持する可能性が高い。このため、取引形態の違いにより、事業者免税点制度の公平性が保たれないという問題も生じる。
 事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について、抜本的に再検討すべきである。
2 消費税の非課税取引の範囲を見直すこと。
 消費税は、消費に広く公平に負担を求める観点から、財貨・サービスによる付加価値に対して均一に課税することが原則であり、非課税取引の範囲は最小限にすべきである。
 非課税取引については、売上げに対して取引先から消費税相当額を収受できない一方で、商品調達や設備投資等の仕入税額控除は認められない。特に、社会保険診療等については健康保険法等により公定価格とされているため、仕入れに係る消費税相当額を診療報酬に上乗せするなどの調整ができない。このため、非課税取引となる資産の譲渡等をする者は、最終消費者ではないにもかかわらず、仕入れに係る消費税について実質的に負担する仕組みとなっている。
 税率引上げに伴い、この負担はさらに大きくなり、非課税取引を主とする事業者の経営を圧迫する要因となり得る。また、居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限のように特定の租税回避行為に対してその都度当該取引を非課税取引とするような対処方法は、税制の簡素化に反する。
 非課税取引として消費税法別表第一(第6条関係)に掲げられる取引には、「税の性格から課税対象とすることになじまないもの」と「社会政策的な配慮に基づくもの」があるが、社会政策的な配慮に基づくものや日本郵便株式会社等が行う郵便切手類の譲渡については、課税取引とし、課税標準及び仕入税額控除の計算過程に取り込み、小規模事業者判定における売上高基準にも反映させ、計算をできるだけ平易にすべきである。

所得税関係

3 基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めること。
(1)基礎的な人的控除の見直し
 現行法上の基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除及び扶養控除は、憲法第25条が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障するための基礎的な人的控除と解され、課税最低限を示すものとして所得控除方式を維持すべきである。また、課税最低限は、財政事情を考慮しつつも、生活保護水準等を参考に決定していくことが望ましく、現行の基礎的な人的控除はその額を引き上げるべきである。
(2)所得計算上の控除から基礎控除へのシフト
 給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を引き上げるべきである。その際、基礎的な人的控除の中には適用関係が人的事情や所得の多寡に左右されるものがあること等を踏まえ、全ての者に適用されるべき基礎控除に負担調整の比重を移すことが望ましい。
①給与所得控除額の縮減
 給与所得控除は、「勤務費用の概算経費」と「他の所得との負担調整」の要素を持つが、現状では給与収入総額の3割程度の控除水準であり、この2分の1とされる「勤務費用の概算経費」の部分に限って比較しても、給与所得者の必要経費の試算額である給与収入の4%を大幅に超えている。また、近年、働き方の多様化により、被用者に近い自営業主(雇用的自営)の割合が高まっており事業所得等との関係からみれば「他の所得との負担調整」を行う必要性は薄れつつある。したがって、給与所得課税の適正化を図るためには、特定支出控除制度をより一層拡充し、給与所得控除額については、その構成を明らかにした上で縮減すべきである。
②公的年金等控除額の縮減
 公的年金等への課税は、保険料の拠出時には社会保険料控除として全額控除され、年金の受給時には公的年金等控除が適用されることで、実質的に非課税に近い制度となっている。したがって、公的年金等控除額は可能な限り縮減すべきである。
 また、世代内での課税の不均衡を是正するため、公的年金等控除額の年齢による差異をなくすべきである。さらに、公的年金等収入と給与収入の双方がある者については、平成30年度税制改正で若干の見直しがなされたものの、担税力のある者に相応の負担を求めるため、それぞれの概算控除額を調整する仕組みをさらに見直すことが必要である。

 

個別要望項目

消費税関係

1 消費税について単一税率とすべきである。
複数税率(軽減税率)が施行されたが、次の問題点があり反対する。
(1)複数税率化の原因となった軽減税率の導入については軽減税率が適用される対象品目を明確に線引きすることは困難である。例えば、市販の医薬品が標準税率となるのに対し、サプリメントなどの栄養補助食品が軽減税率対象となる。「食料品の譲渡」と「外食」の線引きについても複雑であり、税務当局もこのような線引きについて消費者に対し十分な説明・周知を行っているとは言い難い。
(2)定期購読契約に基づく新聞の譲渡が軽減税率の対象となっていることは、生活に最低限必要な水道光熱費などが軽減税率の対象になっていないことに比して全く不合理である。
(3)負担軽減額の側面から見ても、高所得者ほど恩恵額が大きくなるため導入の理由とされた低所得者への負担軽減措置としては有効な手段とは言い難く、公平性にも欠ける。
(4)複数税率の採用により税率区分が必要となった。これにより事務が増大し、事業者に過度な負担を強いている。これは課税技術上、円滑かつ適正な転嫁と納税義務の履行にあたり、事業者に過度の事務負担を負わすべきでないという、税制に対する基本的視点に反するだけではなく、行政側のコストも増大させ恒久的な歳出増をもたらす。
消費支出に対して広く課税するという消費税の性質に鑑み、複数税率(軽減税率)をとりやめ、税率は単一税率に統一すべきである。

法人税関係

2 減価償却制度について
 減価償却の各種制度を、次のとおり改める。
(1)少額減価償却資産及び少額繰延資産の必要経費(損金)算入限度額を30万円未満とする。
(2)法定耐用年数区分の区分数につき更なる簡略化を検討する。
 減価償却制度の各種特例は、積極的な設備投資を促進し、景気の浮揚を下支えすることを目的とするものであるため、事業者が利用しやすい簡素な制度であることが望ましい。
 したがって、基準となる取得価額の限度額や選択する耐用年数の数を最小限に抑えるべきである。

地方税関係

3 償却資産税申告の見直しについて
 償却資産税の対象と申告書の提出期限を見直す。
 償却資産税の賦課期日は、法人についても決算日と関係なく、1月1日現在とされている。また、30万円未満の少額減価償却資産の取り扱いや、建物付属設備の対象範囲について国税と乖離している。
 国税における固定資産の規定との整合性、申告業務の簡素化などの観点から、法人についてはその賦課期日を決算期末日とし、申告書の提出期限も法人税等の申告同様に、決算日から2月以内を申告期限とするとともに、対象資産を国税の減価償却の計算と同一の方法で課税標準の算出をする等、償却資産税の対象資産と申告書の提出期限を見直すべきである。

会員の皆様へ

【税制改正に関する要望】について

千葉県税理士政治連盟では、「令和5年度税制改正に関する要望」を上記のとおり決定いたしました。
「令和5年度税制改正に関する要望」(令和4年8月 千葉県税理士会・千葉県税理士政治連盟)広報誌に同封、「令和5年度税制改正に関する要望」(令和4年6月 日本税理士連合会・日本税理士政治連盟)、「令和5年度税制改正に関する建議・要望」(日本税理士会連合会・日本税理士政治連盟)も併せてご覧ください(「日本税理士政治連盟HP-資料等」に掲載あり)。

日本税理士政治連盟HP-資料等

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