令和7年度税制改正に関する要望
◆ 要望項目
消費税関係
1 消費税における軽減税率制度を廃止し単一税率制度に戻すこと。
消費税の軽減税率制度は、低所得者への逆進性対策としては非効率であり「社会保障と税の一体改革」という当初の目的から乖離している。歳入を毀損し、その補填のため標準税率のさらなる引上げや社会保障給付の抑制が必要となる。
さらに区分経理等により事業者の事務負担が増加していること等の理由から、早期の見直しを図り単一税率制度に戻すべきである。
消費税の逆進性の緩和対策としては、必ずしも税制の枠内で解消する必要はなく対策が必要な者に直接給付が出来る仕組みを構築する等、給付面を含めた税制・社会保障制度全体の中で解決することが適切である。
所得税関係
2 年末調整の実施時期(翌年1月31日まで)及び所得税の確定申告期間(1月1日~3月31日)にすること
所得税の計算において所得控除が複雑化することは、源泉徴収義務者の負担が増し、納税事務において事後の修正手続、争訟等のリスクも増大させる高コストの制度となる。一方で、課税の公平性を求めると制度がある程度複雑化することは避けられないのが現実である。この公平性と手続負担の軽減を両立させるためには、申告期限等を延長し、正確な計算に要する時間を確保することも必要である。
(1) 年末調整の実施時期等
年末調整は、その年の最後の給与支払時に行うこととされている。しかし、配偶者や扶養親族の所得が確定していないことによる見込み計算の場合や、新規契約をしたことなどにより生命保険料控除証明書の到達が遅れた場合など、一旦年末調整を行ったものの、翌年に年末調整をやり直すケースが生じることがある。このような事務手続きについて、計算を一回の手続きで完結させるため、年末調整は翌年1月末までに行うものとして、給与支払者の事務コストを軽減すべきである。
さらに、年末調整の実施時期の変更に合わせて、法定調書及び給与支払報告書の提出期限も2月15日とすべきである。
(2) 所得税の確定申告期間
年末調整の実施時期等を変更する場合は、源泉徴収票や法定調書を必要とする所得税の確定申告に影響が及ぶことから、確定申告期間についても見直しが必要である。
加えて、年末の医療費情報やふるさと納税に係る寄附金受領証明書などについては、現行の確定申告期限では、その間際にマイナポータルに格納されるケースがあり、せっかくの情報が活用されない結果となることがある。
また還付申告だけではなく納付を伴う確定申告も1月1日から申告可能な体制とし弾力性を持たせるべきである。
従って、所得税の確定申告期間は、1月1日から3月31日までとすべきである。
中小法人税制
3 中小企業者等の法人税率の特例について延長すること。
租税特別措置については、その実効性を高める「メリハリ付け」について検討されている。メリハリ付けの方法は「税率をアップさせて特例を拡大」する積極的な方法と、「税率をアップさせずに特例を整理する」消極的な方法が考えられるが、中小法人については後者の方法が妥当する。確かに、中小法人の成長を阻害するような税制については整理されるべきであるが、地域経済を支え、国民の勤労義務の受け皿としての中小法人の役割は重要であり、経済の先行きの不安定性が予想されるなか、中小企業者等の法人税率の特例については延長されるべきである。
災害対応税制
4 雑損控除の適用につき「特定非常災害により生じた損失」については、控除の順番を見直すとともに、繰戻還付制度を創設すること。
雑損控除は、災害又は盗難若しくは横領という納税者の意思に基づかない偶発的な損失による担税力の減少に配慮して、その損失額を所得金額から控除する制度である。また、損失発生年の所得金額から控除しきれない額は、翌年分以後の所得金額から控除される。
課税所得の計算上、現行の雑損控除制度では、災害による損失と盗難又は横領による損失を同じ取扱いとしているが、所得控除すべき災害損失は、費用性資産の滅失損や金銭債権の貸倒れとは異なり、課税済みの生活資本に係る不慮の損害について担税力の減殺を見出すものであるため、まず、最初に災害の有無にかかわらず適用される災害損失以外の他の所得控除を適用し、最後に雑損失のうち特定非常災害により生じた損失につき控除を適用し、より手厚い控除可能性を残すべきである。
また、東日本大震災の際には、「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」により、純損失の繰越控除の特例及び繰戻し還付の特例が適用された。大規模な災害が生じた場合において、その都度特例的取扱いを行うのでは適時の対応が困難になることから、災害が生じた年分の純損失額の繰戻しによる還付を可能とする恒久的な措置等を検討すべきである。
消費税関係
5 インボイス制度導入に伴う各種特例措置について適用期限を延長すること。
インボイス制度の導入に伴い各種の特例が設けられたが、いずれも経過的な取扱いとなっており、それぞれの制度が安定し定着するまでの間、適用期限の延長が検討されるべきである。
(1) 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)は極めて小規模な事業者の事務負担を軽減する措置として有効であり、令和8年9月30日とされている期限について延長が検討されるべきである。
(2) 免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(8割特例)は適格請求書等の登録をしていない事業者の取引排除の最小化という公正な取引を確保する見地から有効であり、令和8年9月30日とされている期限について延長が検討されるべきである。
(3) 一定規模以下の事業者が適格請求書等の保存を不要とする特例について、証憑類のデジタル化が進みにくい類型であるため、令和11年9月30日とされている期限について延長が検討されるべきである。
会員の皆様へ
【税制改正に関する要望】について
税理士会は税理士法第1条に定める「税理士の使命」に基づき、独立した公正な立場において毎年の税制改正に対して建議を行い、この建議のもとに、税理士政治連盟は国会議員に対して陳情を行っています。
この要望書は、税務に関する専門家としての立場から、国民的な視点に立って税理士の総意として取りまとめたものの中から、千葉県税理士会と千葉県税理士政治連盟が、「令和7年度税制改正に関する要望」(令和6年8月)としたものです。